Ithe

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「定番」に新たな角度を加えて生まれ変わらせていく。Process:16

これまで、数えきれない数の服を見てきました。ファッションに興味を持ってから、それを仕事として選んでから、本当に毎年数百、数千の服を見て、触って、自分が本当に着たい服はなんなのか、誰にとっても着こなしやすい理想の服とはなんなのか考えてきました。その答えは多分、定番と呼ばれる服にある。今世の中に出回っている多くの服のモデルになった仕事着や制服、もしくは長い歴史の中でいまだに愛され続けている名作。リーバイス、ラルフローレン、ブルックスブラザーズ...。そういったプロダクトのデザインにある細やかな気づかいや合理性、もしくはまったくの無駄としか言いようのない、歴史が遺した愛しい矛盾。それを現代に受け継ぎ、作り直す作業をはじめてからもうすぐ2年。春に予定している2018-19年秋冬シーズンの発表で、私たちが定番として現代に受け継いだデザインは20型になります。そして、Itheとして今年取り組みたいことに、定番に新たな角度を加えて生まれ変わらせたいというのがあります。たとえば、デザインはもちろんそのままに、着丈や身幅を規格外に拡大したり、縮小する。当たり前ですが、それだけでできあがる服は全く違うものになります。または、当時は欠かせなかった機能や装飾だったけれど、現代に特に必要とされていないものを省く。または型紙を簡略化して、その分だけ価格を下げる。現代の性差に対する考えかたや体型、日本の気候にあわせて最適なかたちを追求していく。または問題を解決していくために、定番をそのまま作り直すだけでなく、目的にアプローチしていくことも、未来にむけて定番を遺していくためには必要なことです。そこには一歩間違えると凡庸な仕上がりになってしまう危険性もあります。でも、「デザインをしないこと」「日常の制服」という私たちのコンセプトを守りながらであれば、きっとItheに袖を通してくれている皆さんの期待を裏切ることにはならないのではないかと、そう考えています。

「良いデザインとは?」という問いに対する答え。Process:15

「良いデザインとはなんだろう?」という問いは、衣服をはじめとして、全てのかたちを生み出すことを仕事にしている人たちが長い時間をかけてその答えを考えてきました。たくさん売れれば良いデザインなのか、人目に止まれば良いデザインなのか、使いやすければ良いデザインなのか、コストカットできれば良いデザインなのか。それぞれの立場によって、それらは正解にもなりますし、不正解にもなります。だからこそ、かたちを生み出す人たちはそれぞれに「良いデザインとは?」に対する答えを胸の内に秘めておかなければいけません。その問いに対する答えは、Itheというレーベルをスタートする時に決まり、それからいくつもの製品の完成を見るたび、「やっぱりその答えは正しかった」と自信を深めてきました。良いデザインとは、デザインされていないデザインである。そのヒントは、歴史を乗り越えて今も残る「定番」と呼ばれるものや、実用性だけにこだわって作られたワークウェア、ミリタリーウェア、アウトドアウェアにあります。土地や国の気候や社会条件、用途にあわせて忠実に素直につくられたかたちには、健康的で平穏な美しさがある。そこには、「デザインは施されるものではなく、それらの要素に沿って必然的にかたちづくられるものである。」という考えが根底にあります。どうしてそのヒントがワークウェア、ミリタリーウェア、アウトドアウェアにあるのかというと、特に仕事や戦争、登山などの場面では、その製品の使い勝手次第で直接使用者の命に関わってしまうこともありえます。そのため、そうした用途を考えて作られる製品は、無駄なものは一切省いて、機能的にぎりぎりのかたちにまで追求されることになる。そこには表層的なデザインが介入する余地は一切なく、それゆえに出来上がったものからは厳然とした潔さを感じられます。「人間の命を守ること」から出発したデザインには、有無を言わせぬ力強さがあるものです。

ファッションをかんたんに。Process:14

私たちはなぜファッションを楽しむのでしょうか。服の本来的な役目とは、身を覆い、守ることにあります。それから長い時をかけて民族固有の文化が生まれ、服は自分を表現するツールとなり、やがて「社会をうつす鏡」と言われるほどファッションは普及しました。今はこれまでのどの時代よりも、すべての人がファッションを自由に楽しめる時代です。社会は個性に寛容になり、ファストファッションのおかげで洋服の値段は格段に下がりました。そして、人はたくさんの服を買うことができるようになって、街を歩く人々はいっそうおしゃれになりました。しかし、それと同時に、若い頃からファストファッションがあった世代が大人になり「何を着たらいいのかわからない」と言う人が増えてきています。これまでは若さだけでどうにかなっていた装いも、一定の年齢にさしかかってくると、ある程度上質な洋服を着ていることはマナーであり相手に対する礼儀にも関わってきます。また、ファストファッションを着て育ってきた人たちが経験を積んで、大人になった自分の顔つきや雰囲気に着ている洋服が負けてしまうことも多くなってきます。そこで洋服に興味がなかったり・コーディネートを組むことに自信がないと、一歩を踏み出してみたり・安くないお金を支払うことに抵抗が生まれてしまうこと。特に普段スーツを着るお仕事の場合だと「もう普段着はどうでもいいや」となってしまう気持ちもよくわかります。しかし、上質な素材の洋服に袖を通して計算されたコーディネートを装い、街を歩いたり人と会ったりすることは思った以上に自信がわき、おのずとポジティブな気持ちが生まれてくるものです。そして、そういった高揚感を日々もって暮らすことが、淡々と繰り返す日常にひとつのたのしみを与えてくれるという部分が間違いなくあると、私たちは考えています。

Itheの展示会に11月18日(土)が追加になりました。

10月より開催しているIthe 2018SS展示会の日程に、みなさんのご要望もあって11月18日(土)を追加することになりました。今回で4シーズン目、休日に開催ができるのはおそらくはじめてだと思います。この日もどなたでもお越しいただけますので、この機会にぜひItheの製品をご覧になってください。私たちがふだん利用しているショールームは平日しかお借りできないことがあり、場所は恵比寿にあるHALOというギャラリーのSPACE 02をお借りしています。時間は12時〜19時を予定しています。「服を着ること」は暮らしの一部にすぎませんが、人肌に触れ、人目にふれるそれらは一部でも大きな一部を占めています。人々の暮らしの中に長い時間をかけて溶けこんだデザインだけがあしらわれた、そんな「ふつうの服」こそが、現代を生きる私たちの暮らしに必要なのではないでしょうか。そして、そういったデザインを今の価値観や美意識にあわせたシルエットで、着まわしやすく、コーディネートしやすく、黒・白・紺といった親しみのある色をつかい、上質な素材によって再現する。日常の制服と呼べるものを、今回もご用意しています。また、今回のコレクションは2018年3月中、春がくるころのお届けを予定しています。Ithe 2018SS展示会 (追加日)※どなたでもお越しいただけます 11月18日(土)12時〜19時@HALO〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-23-21 ヤマトハイツ1F

Itheのホームページに【Review】を追加しました。

【Review】はItheの製品を実際に着てみた感想です。生活のなかで気づいたこと、生産者という目線からできるだけはなれたところで、使用者としての感想をエッセイのように書いています。また、その文章のなかでご紹介している製品のご注文をホームページ内で承ります。お届けまでにお時間をいただくことが多いかもしれませんが、ご注文をいただいてから生産させていただきますので、ご了承ください。口コミとは違う、生活のなかで「服を着る」という行為に焦点をあてた文章はあまり見かけることがありません。食べることや、住むことについて書く人は多いのですが、服というのは「衣食住」と言いながらも、それについて考えるには少しはなれた場所にあるのかもしれません。もしくは(もちろん、それがダメというわけではないのですが)専門家やオタクによるこむずかしい話になりがちです。服とは社会的なものではありますが、同時にごく個人的なものでもあります。しずかに淡々とくりかえしていく暮らしの中で、言葉にされることもなく繰りかえされる「服を着る」ということについて、もっと意識を向けてみたい。素材、肌触り、デザイン、服のかたち、サイズ感、手入れ、畳みかた...そんなことにも、気にしていない、言葉にしていないこだわりが誰にでもあると思います。【Review】の目的は、製品を褒め称えてもらうことではなく、そんな生活に溶け込んだ服の様子を文章にしてみることで、「服を着る」という当たり前の行為に潜む楽しみや面白さを見出そうとするところにあります。それは自分の気持ちよさに直感的であること、自分の暮らしの純度をあげていくこと。なりたい自分の姿をかたちづくっていくことにつながっていくのではないでしょうか。Itheの製品を着てくれている方、もしくは買ってくださったけど着なくなってしまった方。それぞれの生活の中で私たちの服がどう着られ、過ごしているのか。そんな感想を書いてくださる方も、同時に募集しています。https://www.i-the.com/review/

季節の移ろいにあわせて、素材を味わうこと。Process:12

季節の移ろいを肌ではっきりと感じることのできる日本では、その昔から「衣替え」という言葉があるように、その季節にあった素材のものを身につけることが風習としてあります。暑かったり、寒かったり、そんな気候をできるだけ快適に過ごそうと人はさまざまな工夫をしてきました。ところが、「衣替え」という風習は、今の時代、特に一人暮らしをしている若い世代にとってあまり関わりのない話になってしまっているのかもしれません。最近だとほとんどの人が1枚は持っているであろう機能性衣料を肌着として着てしまえば、それを調節するだけでどんな季節でもほとんど変わらない格好で過ごすことができるようになりました。たとえば、「ヒートテック」なんかは、街の人々からニットを1枚脱がせたといえるのではないでしょうか。私自身、そういった機能性衣料を着ることが当たり前になってからというもの、1年中長袖のシャツを着て、冬はその上にコートを羽織るだけ、というような格好をしていた時期がありました。でも、ここ数年は機能性衣料を頼りすぎずに、その季節にあった素材のものを身につけることを意識しています。そうするようにしてから、「季節への意識」がすごく鮮明になったというか、暮らしの味わいがいっそうに深くなったように思います。冬にカシミヤのふっくらとしたニットを着ること、夏に風通しのいい麻のカットソーを着ること。それは季節ごとの行事のように、その季節を象徴する大切な風習でありつづけるということ。そんな思いから、Itheの「夏の制服」を作ることになりました。